岐阜県と滋賀県の間に位置する伊吹山は古くから薬草の産地として知られています。
東海道新幹線の米原〜岐阜羽島間の車窓から雄大な姿を見られることで伊吹山ですが、ここでは280種類もの薬草が確認されています。
伊吹山にまつわる歴史・伝承
日本海側と太平洋側の気候を分ける場所に位置していることが、多様な薬草が育つ環境としてあげられますが、そうした地理的な要因に加えて、戦国時代に織田信長が当時来日していたポルトガルの宣教師に、この地に薬草園を作ることを許可したことでたくさんの薬草が育ったという歴史もあります。
当時日本に渡ってきたものが今でも野生で多く見られるそうです。
さらに古い話だと伊吹山の荒ぶる神を退治しに来たヤマトタケルは、返り討ちに遭ってしまい下山後しばらくして亡くなってしまいますが、この時ヤマトタケルは伊吹山に自生するトリカブトの毒で撃退されたのではないか、とする説もあります。
ちなみにトリカブトは猛毒として知られていますが、適切に処理をすると薬草として使えます。
伊吹山のもぐさ
こうした数ある伊吹山の薬草で最も代表的なものはお灸に使われるもぐさでしょう。
百人一首の
という藤原実方の歌にも登場していて、古くから伊吹山のもぐさは知られていました。
伊吹山で採れるよもぎは良質で、そこから作られる伊吹山産のもぐさは今でも高級もぐさの代名詞になっています。
もぐさはよもぎの葉の裏側にある綿毛を乾かして作ります。このもぐさを体の上に乗せて火をつけるのがお灸です。
先人の旅に習って
昔は旅の際には皆お灸をしていました。
『おくのほそ道』で有名な松尾芭蕉をはじめ、長距離を歩いた昔の旅人は足にお灸をして疲労を取り除いていました。
よもぎに限らず薬草は、ハーブティーやアロマセラピー、あるいは薬局で手に入る市販の漢方薬などとして、様々な形で今も私たちの日常に取り入れられています。
こうした古くから伝わる養生法も上手く使いながら体調を整えて旅を楽しみたいですね。