ワークスタイルやライフスタイルの多様化が進み、都市部で勤務する人たちもテレワークを活用して地方へ居住を検討する人が目立つようになってきている。最近では「多拠点生活」という言葉にも注目が集まり、定住しないライフスタイルに挑戦する人たちも現れている。
群馬県吾妻郡にある嬬恋は最近ではキャンプ地としても注目を集めている場所。昨年ここに移住し、民家の一棟貸宿泊施設「Stay at Hitoyasumi」を運営しているカナコさんに、「もうひとつの居場所」を提供する取り組みを聞いてきました。
– 宿泊施設をはじめたきっかけを教えてください
やはりコロナ禍がきっかけです。
自然の中で過ごす体験。季節の変わり目を自然の匂いで感じるとか、子供の頃の自然体験は大人になって違ってくると思う。子供にとっての1年、2年はとても貴重ですよね。そんな大切な時期、周りを気にせず、家族だけで過ごせる場所を提供したい。と思ったのがきっかけです。
–Stay at Hitoyasumiに込められた想いを教えてください
私自身小さい時は当たり前に感じていて、自然の風景をあんまり気に留めることはなかったんです。でも都心で勤務したりしていると、改めて大人になって、移住してみて、毎日綺麗だなって思う様になった。都心だとボーッと眺める時間さえなかったりするので。
居場所が1つだと、煮詰まってても我慢して疲れてしまう。。
もやもやしてても、嬬恋に来ればスッキリできる。明日に進むための「ヒトヤスミ」のための場所。そういった想いも込めています。
この辺りは冬は休業する貸別荘も多いですが、できる限りオールシーズンやりたい。冬の厳しさ・良さも感じてほしいです。
–利用される方はどんな人が多いですか?
まだ始めたばかりですが、群馬県の方に泊まっていただくことも多いです。私も幼少期高崎市に住んでましたが、群馬にいても自然に触れることは実は少ない様な気がする。触れようと思わないと。
泊まった群馬県在住の家族からも、自宅の周りには子供に虫を見せられるところがなかった。と。地元の人にも自然に触れてほしい。
– 移住してみて
どこへ行っても空いている(笑)。
嬬恋は、自然・人との繋がりの両方で癒される場所ですね。役所や移住相談センターの人が話をちゃんと聞いてくれる。
去年8月に移住して。住んでみると色々、お風呂の水栓が割れちゃったり車の調子が悪かったり。ハプニングあったけど、周りの人が助けてくれた。
みんな支え合いながらじゃないと生きていけないからか、みんな優しい。
これからの”もうひとつの居場所”に求められる体験とは?
カナコさんに嬬恋地域をガイドしていただいた。「嬬恋」の名称にまつわる伝説、天明の浅間山の大噴火の凄まじさを物語る「鬼押出し園」、雄大な浅間山を間近で感じることのできる場所など、歴史・文化・自然に触れることで、その地域への愛着、想いは強くなり、その地域に関わっていくことへの誇りのようなもの、もっと知りたくなる、また訪れてみたくなる動機が生まれてくる。
シェアサービスや民泊などの普及によって、誰もが気軽に「もうひとつの居場所」を持つことができるようになる中、日常では体験できない「非日常性」だけではなく、その地域へ意識を向け、愛着を感じる、関わりを感じられるような体験が「もうひとつの場所」として選ばれるポイントになってくるのかもしれない。カナコさんのような来訪者と地域の橋渡しを担うホストの役割の重要性を感じた。
今回の取材にご協力いただいた方
かなこさん
自然豊かな群馬県で育つ。海に憧れ大学卒業後、沖縄で3年間ホテルのセラピストとして働く。その後、東京での勤務を経て、現在はフリーランスとして「癒し」をテーマに活動中。2021年、日常から離れ、自分の心を取り戻す場所として一棟貸のお宿「Stay at HITOYASUMI」をオープン。