都心で展開される自治体のアンテナショップは、県で展開しているものに加え市町村単位で展開される店舗も目立つようになってきている。各自治体にとってアンテナショップが都市部との繋がりの場として、大きな役割を担っていることが伺える。
今回は東京の新宿区西早稲田で日本全国の「本当に美味しいもの」「作り手の見える商品」を取り揃えたグロサリーショプ「ワセダ食堂」を展開している株式会社ワングローバルの代表取締役の塙健司さんに食をテーマに都市部と地域を繋ぐ「場」の体験についてお話を伺ってきました。
– 「ワセダ食堂」をはじめたきっかけはなんですか?
もともと食品のコンサルタントをしていましたが、地域の生産者さんとお仕事をする中で、生産者の皆様にとって拠点となる場を作りたいと思うようになり、将来的に自分でセレクトした商品でお店を立ち上げたいと思うようになりました。
学生時代から慣れ親しんだ早稲田という場所で、育ててくれた街に恩返しできればという思いもありました。
–生産者さんの拠点とは?
各地をまわるなか、東京でチャレンジしたいという声をよくいただきます。
私は販路開拓や商品開発のコンサルティングを生業としていますが、生産者さんと伴走していくことを心がけています。ですので、経営面など幅広い相談をいただくこともあります。
東北の震災復興アドバイザをやらせていただく中でも、もう少し頑張ればもっと良い商品になる、都市部で試してみる場所があればいい、出口を用意できればと感じることが多かったです。
–地域の商品を扱う魅力について
地域にはまだまだ知られていないもの、食文化がある。そういったところを紹介していきたい。
生産者は意外と当たり前に、普通に思っているものも全国からすると貴重なおいしさ。その面白さを伝えていきたい。
メジャーな部分はテレビやSNSでたくさん紹介されているが、でもその周辺にはまだまだ知られていない魅力がたくさんある。地域性も併せて届けられるような。そんな活動を続けていきたい。
–コロナ禍の中でオープンして1年を経過しましたが
始めた当初はもっと早く収束して日常に戻ると思っていました。でもオープンして1周年を迎え、これまでのような日常にはなかなか戻っては行かない、むしろ新しい生活様式に変わりつつあることは実感としてあります。
そのような中で、先日広島の呉市の特集をやりました。呉市の方でSNSで宣伝してくれたこともあって、首都圏の各地から呉に興味を持っていた多くのお客様にお越しいただいた。みなさん、なかなか旅行に出られない中、地域への興味、食材の面白さを体験できる場所としてお越しいただけたのではないか。新しい生活様式を意識した取り組みも積極的に行っていきたい。
– これからの取り組みを教えてください
しっかりとビジネスモデルを確立していきたい。もっと地域のイベント、飲食も含めた取り組みをやってみたい。観光ガイドみたいなことも。
地域にはまだ多くの人が知らない魅力あふれる食文化がたくさんあります。そういったものをもっと都市部の人に知っていただきたいですし、ワセダ食堂で出会ったことで、現地へ興味を持って足を運んでいただくきっかけになっていただければ。
やってみないとわからないことがたくさんあります。1年間飲食に取り組んできた経験も活かしながら挑戦を続けていきたい。
地域と都市部をつなぐ”場”の体験
生産者の方たちの挑戦を支える場所であり、都市部の人にとってはまだ知らない新しい「地域の食文化」に出会うことのできる場所。コロナ禍を経て新しい生活様式が模索される中、ネットやテレビの「情報」だけでは伝えることのできない、「体験」を提供できる場所としての役割は今後大きくなっていくと感じる。
物を中心とした消費から体験を中心とした消費へと意識が変わる中、地域のアンテナショップやセレクトショップにおける「体験」が新しい地域への「行動」のきっかけに繋がる可能性を秘めている。