旅に出たくなる雑学

歴史を歩く#5|酒問屋で賑わいをみせた江戸の新川の今と昔

酒問屋が軒を連ねた新川

東京都の東西線茅場町駅、日比谷線八丁堀駅が最寄駅となり、門前仲町方面へと永代橋が架かるエリア、東京都中央区新川には、その地名の由来となる「新川」と言う川がありました。江戸時代、豪商河村瑞賢により諸国から船で江戸へと運び込まれる物資の陸揚げのために万治3年(1660)に開削されたそうです。

新川には多くの酒問屋(さかどいや)が軒を連ねていたそうで、一説では江戸の酒問屋の三分の一が新川に集約していたと言われるほどで、江戸名所図会にも当時の新川の様子が描かれています。

灘や伏見から運ばれてくる酒樽には、他の銘柄と区別するために銘柄の特徴を表すデザインが施されたそうです。もしかしたらこれが日本酒ラベルの始まりなのかもしれないですね。

「下り酒」としてブームになった上方のお酒

以前、灘五郷をご紹介しましたが、当時の江戸では上方(近畿方面)から運ばれてくるお酒は「下り酒」と呼ばれ人気を博していたそうです。特に灘のお酒は海上運送の過程で落ち着いた味わいとなり、江戸で飲む灘のお酒は格別だったそうです。

上方の人たちは、江戸に辿り着いた下り酒を飲んでみたくて再び上方へ運び直したほどで、「富士見酒」と呼ばれ人気があったという話もあります。

新川の今

新川は戦後、瓦礫の撤去などの戦災処理として埋め立てられました。当時、隅田川に合流していた付近には石碑が建てられ、当時の歴史を語る場所となっています。

新川之跡

川はなくなってしまいましたが、当時の面影を残す場所として、寛永2年(1625)に創建された新川大神宮では今もなお、酒樽が奉納され、酒問屋や酒造家の守護神として崇敬を集めています。

中央区新川|新川大神宮

東京には新川のように江戸時代や歴史の面影を残す場所がたくさんあります。歴史を辿る都内旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。

関連記事

  1. 福男選びで有名な十日戎の開門神事とは?|西宮神社
  2. 懐かしさと新しさがバランスよく共存する尾道の魅力
  3. 食事がもっと楽しくなる “基本味” の話…
  4. キハ181系特急の迫力|四国の旅を支え続けた”南風&…
  5. 地域の食文化を知る|八丁味噌について
  6. 伝承の足跡を辿る旅|三種の神器にまつわる徳島の地名や伝承
  7. 1日2往復。国鉄特急色の381系やくもが復活
  8. 出雲街道を行く

おすすめ記事

1日2往復。国鉄特急色の381系やくもが復活

40年にわたり特急やくも号として伯備線を走り続けた国鉄型特急381系も引退が近づいてきました。20…

山陰本線を走っていたキハ181系特急列車

今も昔も米子駅は山陰本線を西と東に分けるターミナル駅です。2021年には国鉄時代から親しま…

.local|地域と都市部をつなぐ”場”が持つ体験価値を考える

都心で展開される自治体のアンテナショップは、県で展開しているものに加え市町村単位で展開され…

日本神話の世界|黄泉平坂 〜あの世への入り口!?〜

墓石のルーツ!? 黄泉平坂とは?島根県の東に黄泉比良坂(よもつひらさか)と呼ばれる場所が…

北陸本線を駆け抜けた特急列車

かつて北陸本線は滋賀県米原から新潟県直江津まで結んでいましたが、北陸新幹線の開業に伴い区間内で第三…

神話の足跡を辿る旅|草薙剣にまつわる静岡県の地名をご存知ですか?

草薙剣(くさなぎのつるぎ)とは天皇家に伝わる三種の神器の一つで正式には天叢雲剣(あめのむらくものつ…

大阪と北陸・東北を結んでいた懐かしの485系特急『雷鳥』と『白鳥』

485系特急の思い出かつて国鉄が民営化されJ Rが発足する前後の時期、当時は小学校高学年で…

青春18きっぷの旅|東京から越後湯沢までの日帰り旅

2024年夏は青春18きっぷの発売決定の告知が遅くなったことで、ひょっとしたら無くなるのでは?と心…

新宿から約1時間で行ける。江戸庶民に親しまれた大山詣り

古くから信仰のあった大山神奈川県伊勢原市にある「大山」は、常に雲や霧を生じ、雨を降らすので…

深夜移動の楽しさを満喫|寝台特急サンライズ瀬戸

寝台特急サンライズ瀬戸の車内レポート動画のご紹介です。快適な深夜の移動を楽しんでみてください。

旅を快適に

  1. 烏山線の旅

旅先のからだケア

旅に出たくなる雑学

広告

PAGE TOP